炭素を含まないエネルギ源は,使用時にはCO2を排出しませんが,製造過程や運搬過程では,製造/運搬自体に使用されるエネルギ源しだいで,ライフサイクル評価:LCAではCO2排出はゼロとはなりません.本ページでは,各エネルギ源のLCAでのCO2排出係数について説明します.
次の表は我が国の電力のCO2排出係数を示しています.ゼロではないうえ軽油よりも高い値です.
年 | CO2排出係数 (kg-CO2/kWh) |
2017年 | 0.496 |
2018年 | 0.462 |
2030年(目標) | 0.37 |
【参考文献】電気事業分野における地球温暖化対策の進捗状況の評価結果について(環境省):https://www.env.go.jp/press/files/jp/114277.pdf
次に,水素のLCAでのCO2排出係数ですが,次の図のように製造方法によってCO2排出係数は様々で,風力や太陽光による電力由来の水素でもゼロではありません.主に充填でのCO2排出があるようです.
【参考文献】水素のライフサイクル温室効果ガス排出量評価について(みずほ情報総研): https://www.mizuho-ir.co.jp/seminar/info/2017/pdf/bif0131_02mizuho.pdf
また,次の表は,EUバイオ燃料環境持続性基準案における原料種・生産方法別のバイオ燃料由来温室効果ガス排出量の既定値,すなわちバイオ燃料のLCAでのCO2排出係数を示しています.植物の成長時に大気中のCO2を吸収するバイオ燃料ですが,植物の栽培時,加工時,輸送を考慮するとCO2はネットゼロではありません.ここで,実際には温暖化係数が310のN2Oが排出されていますが,等価のCO2量として排出量に加算されています.
【参考文献】輸送用エコ燃料の普及拡大について(補遺版)(環境省エコ燃料利用推進会議):https://www.env.go.jp/earth/ondanka/biofuel/materials/rep_h2101/full.pdf
また,次の表にパーム油由来のBDFと軽油のLCAでのCO2排出係数が示されていますが,パーム油由来のBDFは,原料生産でのCO2排出量が多いようです.
【参考文献】 西尾澄人,バイオ燃料によるGHG(Greenhouse Gas)削減について,日本マリンエンジニアリング学会誌,Vol.51,No.1 (2016).
以上のように,カーボンニュートラル社会に資するエネルギ源として期待されている電力,水素,バイオ燃料は,必ずしもこれらだけで脱炭素が実現できるものではないことがわかります.
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