オフロードモビリティの運転モード

技術

2022年3月にNEDOが技術開発ロードマップ(HDV用燃料電池)を発表するなど,発電部門,乗用車部門などのGHG排出インパクトが比較的強い分野以外でも脱炭素化の具体的な動きが活発化しています.ここで,HDVとはHeavy Duty Vehicleで,オンロードモビリティではトラック,バスなどの商用車,オフロードモビリティでは建設機械,農業機械が典型的です.パワーソースが重負荷に適したディーゼルエンジンで,比較的重負荷,長時間で運転されるためBEV化しづらい点が共有項です.電池に比してエネルギ密度が高い水素をエネルギとする燃料電池が将来のパワーソースとして期待されていますが,オフロードモビリティでは,水素ステーションなどのインフラにアクセスしづらいことから社会実装の見込みは不透明です.本ページでは,カーボンニュートラル社会でのパワーソースの本命が不透明なオフロードモビリティの使われ方,すなわち運転モードについて説明します.

運転者で千差万別な運転モードは,乗用車ではWLTC:Worldwide harmonized Light duty driving Test Cycleが広く用いられています.次の図に示す国連の傘下組織である自動車基準調和世界フォーラムが発行元で,WLTP:Worldwide harmonized Light duty driving Test Procedureで規定された運転モードです.

引用:環境省,WLTCの国内導入について,自動車排出ガス専門委員会(第53回)議事次第・配付資料53-2,(2014).:https://www.env.go.jp/council/07air-noise/y072-53/mat%2002.pdf/02%20%E8%B3%87%E6%96%9953-2.pdf

一方,オフロードモビリティでは,同じく国連の自動車基準調和世界フォーラム発行のNRMM gtr:Non-Road Mobile Machinery global technical regulationで規定されているNRTC:Non-Road Transient Cycleが広く用いられています.バックホー,ホイルローダ,クローラクレーン,農用トラクタ,掘削機,アーク溶接機およびスキッドステアローダを想定した1200s程度の正規化された負荷サイクル(normalized dynamometer schedule)になっています.複数のオフロードモビリティの運転モードをつなげた約1200s周期になっていますので,個別のオフロードモビリティの運転モードが必要であれば,次の図のように該当箇所を切り取る必要があります.

引用:清水一史,農用トラクタの排出ガス評価手法に関する研究,鳥取大学博士後期課程論文,(2014).

【参考文献】NRMM gtr,ECE/TRANS/180/Add.11: 2010,ENGINE EMISSIONS FROM AGRICULTURAL AND FORESTRY TRACTORS AND FROM NON-ROAD MOBILE MACHINERY, 2010.(United Nation, 2010/03/09).:https://unece.org/fileadmin/DAM/trans/main/wp29/wp29wgs/wp29gen/wp29registry/ECE-TRANS-180a11app2e.pdf

なお,アメリカ合衆国環境保護庁(EPA)に個別のオフロードモビリティの運転モードがAsciiデータで公表されていますので便利です.

【参考文献】EPA Nonregulatory Nonroad Duty Cycles, (EPA).: https://www.epa.gov/moves/epa-nonregulatory-nonroad-duty-cycles

また,NRTCは,JISにも規定されています.

【参考文献】JIS B 8008-11, 往復動内燃機関-排気排出物測定-第11部 附属書A

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