先月,軽自動車カテゴリのEV,日産サクラ/三菱eKクロスEVが発売されました.ライトデューティモビリティから電動化が進む,の王道が体現されたエポックメイキングな出来事と感じます.また,7/21には中国BYD車のEVが日本市場に参入と報道されました.国内で販売されるEVの車種が増えてきましたが,本ページでは,モビリティの電動パワーソースを再考します.
【参考文献】中国BYDが日本の乗用車市場参入、トヨタなどの牙城崩せるか(Bloomberg,2022/07/21):https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-07-21/RFATJDDWX2PS01
次の図は,日本経済新聞から引用したガソリン車/HV車/EV車のコストです.Cセグメントの乗用車の例で,ガソリン車は売価200万円程度のトヨタカローラ,EVは40kWhバッテリの日産リーフのようですが,内燃機関のコストは20万円,電気モータのコストは5万円で,原動機単体でのコストでは電気モータがリーズナブルです.カローラとリーフの最高出力はそれぞれ103kW,115kWですので,単位出力当たりのコストは,それぞれ1.9千円/kW,0.4千円/kWで,電気モータの低コストが顕著です.ここで,英国自動車協議会の電気モーターロードマップ2020での電気モータのコストは,2020年で6ドル/kW,2025年には4.8ドル/kWで,リーフの例と合わせて解釈すると現在の電気モータの単位出力当たりのコストは500円程度のようです.
一方で,エネルギの貯蔵コンポーネントを比較すると,燃料タンク類が2万円,バッテリが90万円で,EVが内燃機関車と比して高価格になっている主な原因になっています.とりわけ,HDVでは高価格となり,例えば50kWで日中8h作業するHDVでは400kWhのバッテリが必要で,上記のとおり40kWhで90万円ですので,900万円のコストとなります.また,英国自動車協議会の電力貯蔵ロードマップ2020でのバッテリパックのコストを見ると,2020年で125ドル/kWh,2025年で97ドル/kWh,2030年で77ドル/kWh,2035年で63ドル/kWhとのことですので,15年後でもEVのコストは内燃機関車と比較して高い可能性が推察されます.
【参考資料】トヨタカローラ諸元表:https://toyota.jp/pages/contents/corolla/002_p_001/pdf/spec/corolla_spec_201909.pdf
【参考資料】電気モーターロードマップ2020(英国自動車協議会,2021/02):https://www.apcuk.co.uk/app/uploads/2021/09/https___www.apcuk_.co_.uk_app_uploads_2021_05_Exec-summary-Technology-Roadmap-Electric-Machines-finalZ-jp.pdf
【参考資料】電力貯蔵ロードマップ2020(英国自動車協議会,2021/02):https://www.apcuk.co.uk/app/uploads/2021/09/https-__www.apcuk_.co_.uk_app_uploads_2021_05_Exec-summary-Technology-Roadmap-Electrical-Energy-Storage-finalZ-jp.pdf
次に,EVの課題となっている充電ですが,次の図は現在広く使用されている充電器の説明で,普通充電と急速充電に大別されています.例えば日産自動車で提供されている3kWおよび6kWの普通充電器は,数万円程度の設置費用で自宅充電が可能で,例えば夜中に10h充電すれば30kWhおよび60kWh程度充電できる概算になります.したがって,日産サクラの20kWh,リーフの62kWhのバッテリは一晩でおよそ満充電できる合理的な設定と考えられます.
ところが,例えば50kWで日中8h作業するHDVの場合は400kWhのバッテリが必要で,夜中10時間程度の充電には50kWの急速充電器が必要となります.急速充電器の価格ですが,ニチコンの50kWでは340万円で,上記のバッテリのコストと共にEV化の障壁と言えそうです.
【参考文献】ニチコン株式会社,EV・PHV用急速充電器:https://www.nichicon.co.jp/business/quick_chargers/
コメント