蓄熱技術による未利用エネルギの活用

技術

我が国の1次エネルギの6割程度は利用されておらず,脱炭素社会に向けて未利用エネルギの積極活用が期待されています.未利用エネルギは最終的に熱エネルギとして大気へ放出されますが,未利用エネルギの利活用には,廃棄されてしまう熱を何らかの手段で蓄え,必要なタイミングあるいはロケーションで放熱し有効利用することが必要になります.本ページでは蓄熱技術の概要と動向を説明します.

次の表は,蓄熱技術を3つに大別しています.

表1.蓄熱技術

 顕熱蓄熱潜熱蓄熱化学蓄熱
蓄熱密度比較的低い比較的高い

顕熱蓄熱は,レンガなどの固体や水などの液体に熱を加え,必要な時空間まで断熱によって熱エネルギを保持する技術です.断熱しだいで蓄熱の保持時間が左右されるため,比較的長時間の蓄熱にはそれなりの断熱コストが必要です.また,貯湯槽とよばれる広く普及した蓄熱コンポーネントでは,内部の圧力によりますが,水を蓄熱体としているため出力温度は100℃程度以下に限定されます.

潜熱蓄熱は,PCM(Phase Change Material)の相変化による熱移動を利用した技術です.単位質量あたりの凝固/融解潜熱が高いPCMほど蓄熱量が多くなり,水-氷もPCMとしてよく利用されています.

化学蓄熱は,化学物質の反応熱を利用した技術です.持続的に熱の出入りを制御するには化学変化は可逆である必要があり,モル数に応じた吸/放熱量で蓄熱量が決まります.下図は酸化マグネシウムの水和反応と水酸化マグネシウムの脱水反応による持続的な蓄熱および放熱の実現例です.化学蓄熱は蓄熱技術の一種として知られていますが,熱エネルギの直接貯蔵ではなく物質変化でのエネルギ貯蔵ですので,原則,断熱の必要がなく移動が容易な点や,化学物質の選定しだいで出力温度が選択できる点が魅力です.

タテホ化学工業株式会社ホームページ,水酸化マグネシウム系化学蓄熱材.:https://tateho.co.jp/products/chargemag.html

また,化学蓄熱は蓄熱密度の高さからヒートポンプとしての活用が進められており,ケミカルヒートポンプの社会実装が期待されています.

【参考文献】加藤之貴,化学蓄熱による高温熱エネルギーマネジメントの可能性,集光型太陽熱技術研究会,(2014).:http://www.iae.or.jp/wp/wp-content/uploads/2014/08/03_kato_20140117.pdf

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