カーボンニュートラル社会に向けて脱炭素化の必要性が様々な場面で謳われるなか,CO2排出係数が低い合成燃料の社会実装が期待されています.その単語からは,人工的に合成された燃料となりえる物質は合成燃料に該当するよう想像できますが定義化がなされています.本ページでは,合成燃料の概要と動向を説明します.
資源エネルギー庁が事務局を務める合成燃料研究会による2021年4月の中間取りまとめでは,合成燃料の定義は次の図のとおり,水素と二酸化炭素を原資とした燃料と定義化され,とりわけ再生可能エネルギ由来の水素を原資とした場合には,e-fuelと呼称する旨が示されています.図のとおり,合成燃料は様々な製法で製造され気体/液体を問いませんが,共通点は炭化水素で,例えばハーバーボッシュ法で水素と窒素から合成されるアンモニアは合成燃料とは呼ばないことになります.
上記定義のように,合成燃料は水素から製造されるため,製造コストは水素に依存します.次の図は水素のコストに二酸化炭素のコストと製造コストを加算した合成燃料のコストの試算結果です.4つのケースで試算されていますが,2021年現在の水素価格100円/Nm3で合成燃料を製造すると700円/L程度のコストがかかるようです.我が国の水素基本戦略に記述されている将来の水素価格20円/Nm3のケースでは200円/Lと見積もられており,現在の化石燃料と比較して高額化が予見されます.
上記のように,合成燃料のコストは水素に依存するため,水素を燃料にした方がリーズナブルですが,水素と比較して体積エネルギ密度が高い合成燃料は,ヘビーデューティモビリティでは活躍が期待されています.
合成燃料の社会実装時期ですが,下図では2040年頃と予見されています.合成の方法自体はすでに開発されていますが,工業製品としての流通には20年ほどかけた課題解決が必要とされています.
最後に,合成燃料の物理特性を紹介します.合成燃料は,既に化石燃料として使用されている上記気体/液体燃料を人工的に合成した燃料ですので,基本的には物理特性は化石燃料のそれとほぼ同じです.今後,合成燃料の燃料規格が制定され,安定した品質の合成燃料が使用されていくことと推察します.
【参考文献】合成燃料(合成燃料研究会):https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/gosei_nenryo/pdf/20210422_1.pdf
【参考文献】合成燃料およびその他の燃料定数(日本自動車研究所):http://www.jari.or.jp/portals/0/jhfc/data/report/2005/pdf/result_ref_1.pdf
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