2021年5月,IEAは2050年でのGHG排出ネットゼロへのバックキャストであるNet Zero by 2050を発表しました.本ページではNet Zero by 2050の概要を説明します.
およそ30年先の2050年のフォーキャストは占い域を出ませんが,GHGのネットゼロを実現するために必要な行動をバックキャストで考察した本報告は,それぞれのセクターに携わる人,企業,国・地域の行動指針として有意義な情報と考えられます.ただし,実現性の有無は議論されていませんので,あくまでべき論である点に注意が必要です.
【参考文献】Net Zero by 2050(IEA):https://www.iea.org/reports/net-zero-by-2050
2045年までに新しい技術が広く普及し,オンロードでは電気あるいは燃料電池で車両が走り,航空機ではバイオ燃料あるいは合成燃料に頼り,工場/プラントではCCSあるいは水素が使用されるとされています.燃料を搭載して移動するモビリティではエネルギ効率の高い電気の使用が合理的で,バッテリのエネルギ密度の低さを許容できるモビリティは電化,許容できないモビリティは水素化がネットゼロの手段とされています.水素のエネルギ密度でも搭載性に難があるモビリティでは,バイオ燃料や合成燃料を消去法的に選択するほかはないようです.ここで消去法的とは,内燃機関での燃焼はエネルギ効率が0.4前後と低いこと,燃料製造のプロセスでのコスト高などのため,やや合理性に欠くためです.また,CCSが挙げられていますが,ある程度の化石燃料の使用,あるいは合成された炭化水素燃料の利用を想定したものと考えられます.
燃料転換の他には,省エネと行動変容が脱炭素化のキーとされています.省エネは既におなじみの永遠の課題ですが,人々の移動手段の変更など,様々な意識および行動の変容が求められると記述されています.
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