2021年7月14日,EU欧州委員会は,2030年までのGHG排出削減目標55%(1990年比)への手段をいくつか発表しました.オンロード分野では,2035年までにガソリンおよび軽油を燃料とする車両の新車販売禁止が発表されています.また,脱炭素が不十分な国からの輸入品に過料を課す措置である炭素国境調整措置が2023年から段階的に導入され,2026年から賦課を始めると発表されています.これらのようにカーボンニュートラル社会の実現には経済的なペナルティをドライバとして検討されており,本ページではその一種であるカーボンプライシングの概要と動向を説明します.
【参考文献】EU 2035年にガソリン車などの新車販売 禁止方針(NHK NEW WEB 2021/07/15):https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210714/k10013140021000.html?utm_int=detail_contents_news-related_001
炭素国境調整措置は事実上の関税ですが,CO2の排出量に応じた値付け,すなわちカーボンプライシングの一種です.次のとおり,この他にもカーボンプライシングの形態はいくつかあります.
・炭素税:燃料および電気の使用量に応じた課税措置
・国内排出量取引:対象者毎に排出量の上限(キャップ)を定め,余剰ある対象者と超過する対象者間で排出量を売買するしくみ
・クレジット取引:非化石燃料取引,J-クレジット,JCM,ゼロエミッション車クレジット取引など,脱炭素行動により得られた削減量をクレジットとして価値化するしくみ
・炭素国境調整措置:上記のとおり
【参考文献】カーボンプライシングの全体像(環境省):https://www.env.go.jp/council/06earth/sankou2.pdf
なお,2021年5月31日には,カーボンプライシングで値付けされた炭素価格の実勢が世界銀行により発表されています.IPCCが公表している大気の温度上昇を産業革命前比2℃以内に抑制する目標には40~80 USD程度のカーボンプライシングが必要とされていますが,国および地域間での価格差が著しく,多くは40 USD以下となっています.
【参考文献】Carbon pricing 2021 (World bank):https://carbonpricingdashboard.worldbank.org/
我が国でも今後のカーボンプライシングのあり方が検討されてており,2021年夏ころに中間とりまとめが行われる予定です.
【参考文献】カーボンプライシングのあり方に関する検討会(環境省):https://www.env.go.jp/earth/ondanka/cp/arikata/index.html
コメント