2020年10月26日,菅首相の所信表明演説で2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラル宣言が表明されました.想定されている2050年頃の社会を解説します.
下図は,経済産業省が示しているカーボンニュートラル実現時の産業構造のイメージです.様々な産業が描写されていますが,図の左上方から右下方に向かって,エネルギの調達から変換までの形態が描写されており,大きくは調達と変換に整理できそうです.また,エネルギ変換では,車両をはじめとするモビリティと工場をはじめとするファシリティに大別できそうです.さらに,モビリティは,乗用車両をはじめとするオンロード車両,作業用車両をはじめとするオフロード車両,船舶,航空機に分けられそうです.
【参考文献】カーボンニュートラルの産業イメージ(経済産業省):CN_Panel_B_1224.1 (meti.go.jp)
エネルギの調達
エネルギの調達では,上図の左上方に描写されている海の向こう側,すなわち海外調達が想定されています.よく見ると,炭鉱やガス田の絵があり,カーボンニュートラル実現時でも一次エネルギの一部は,化石燃料に依存すると想定されています.ただ,その化石燃料からのCO2は,発生するロケーションでのCCS (Carbon Capture and Storage)技術により,大気中への排出が抑制されることになっています.また,一次エネルギの一部は,水素やアンモニアなどの水素化合物の形態で海上輸送され,我が国へ輸入されます.ここで,エネルギを水素化合物として蓄える際には,再生可能エネルギが使用されることになっており,PtX (Power to X)と呼称されています.なお,PtXでは,再生可能エネルギの余剰分を使用することで,タコの足食いを避けるよう運用されます.
上図の海の手前側,すなわち国内では,風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギが,輸入に依存しない一次エネルギとして想定されています.ただ,エネルギの時間的な変動が大きくベースロードには不適なうえ,我が国のエネルギ需要全てを賄うことは困難と考えられているため,カーボンニュートラル社会でもエネルギ資源の輸入は継続の見込みです.
【参考文献】CCS(資源エネルギー庁):スライド 1 (meti.go.jp)
【参考文献】PtX(MAN):Power-to-X (man-es.com)
【参考文献】P2G(みずほ情報総研):欧州におけるPower to Gas のプロジェクト動向と (mizuho-ir.co.jp)
【参考文献】バイオマス発電(資源エネルギー庁):バイオマス発電|再エネとは|なっとく!再生可能エネルギー (meti.go.jp)
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