カーボンニュートラル社会の解説:Part 6 エネルギ変換/ファシリティ

動向

カーボンニュートラル社会の解説:Part 1Part 2Part 3Part 4Part 5の続きです.想定されている2050年頃の社会を経済産業省が示しているカーボンニュートラル実現時の産業構造のイメージを用いて解説します.Part 6ではエネルギ変換のうち,ファシリティ分野に着眼します.

出典 経済産業省,カーボンニュートラルの産業イメージ

【参考文献】カーボンニュートラルの産業イメージ(経済産業省):CN_Panel_B_1224.1 (meti.go.jp)

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エネルギ変換:ファシリティ

上図の左上方には,産業部門の電化を進める方針が記述されていますが,既に電力需要がエネルギ消費の大半であるデータセンターをはじめとする情報通信施設での脱炭素化は,発電自体でのカーボンニュートラル化に従属し,脱炭素化の主な手段は,省エネ化と考えられています.例えば,2018年度の小売電気事業者のCO2排出係数は,全国平均値ベースで0.462 kg-CO2/kWhで,灯油の0.244 kg-CO2/kWh,LPガスの0.213 kg-CO2/kWh,都市ガスの0.180 kg-CO2/kWhなどよりも高い値になっており,石炭火力発電をはじめとする化石燃料による発電を低減化していく必要があります.そのうえで,DX(Digital Transformation)が進むなか,電力使用量を縮減するための効率的な運用が必要ですが,グリーン成長戦略ではとりわけ,半導体の省エネ化が記述されています.情報通信施設に係わらず,既に電化が進んでいる分野では,脱炭素化の手段は省エネ化に帰着するようです.

【参考文献】電気事業分野における地球温暖化対策の進捗状況の評価結果について(環境省):タイトル (env.go.jp)

【参考文献】エネルギー別二酸化炭素排出係数(福島県石油商業組合):2013page2.pdf (fukushima-sekisho.net)

【参考文献】2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略(内閣官房):siryou1.pdf (cas.go.jp)

ファシリティの熱需要には,ボイラー,ヒートポンプ,コジェネレーションなどで熱供給しています.熱供給には火力方式および電力方式があり,火力ではカーボンフリー,あるいはカーボンニュートラル燃料の使用が検討されています.例えば,都市ガス原料であるメタンを水素とCO2から合成する技術,すなわちメタネーション技術での脱炭素化が研究されており,既存インフラや機器を改変なく運用できるため,経済合理性が高いソリューションとして期待されています.また,単純にファシリティの断熱性を高める省エネ化技術も積極的に推進されています.

一方,電力では,発電での脱炭素化のほか,EMS(Energy Management System)での効率的な熱電エネルギの管理,運用による省エネ化技術が進んでおり,管理,運用対象がビルであればBEMS,工場であればFEMS,家庭内であればHEMS,地域であればCEMSなどと呼ばれています.なお,EMSは省エネ化技術ですので,火力にも有効な低炭素化技術です.

【参考文献】都市ガスでのメタネーション(大阪ガス):大阪ガス:Daigasグループ カーボンニュートラルビジョンの策定について~2050年脱炭素社会実現に向けた挑戦~ (osakagas.co.jp)

【参考文献】ICTを利活用した環境にやさしいまちづくり(総務省):000121605.pdf (soumu.go.jp)

また,工業部門,民生部門に係わらず,有効に使用されなかったエネルギは排熱として大気に放熱されていますが,この未利用熱エネルギの有効活用(WHR:Waste Heat Recovery)が推進されており,グリーン成長戦略では資源循環関連産業に記述されています.熱を再利用(Reuse)する排熱駆動ヒートポンプ技術や,熱エネルギを電気エネルギに変換する排熱発電技術(Recycle)が研究開発されていますが,これまでには排出されてきた低位の熱エネルギーを原資とするため,例えば,カルノー効率が比較的に低くなり,機器およびシステムのコストが高くなります.

【参考文献】未利用熱活用技術の最新動向(NEDO):100902069.pdf (nedo.go.jp)

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