カーボンニュートラル社会の解説:Part 5 エネルギ変換/船舶-航空機

動向

カーボンニュートラル社会の解説:Part 1Part 2Part 3Part 4の続きです.想定されている2050年頃の社会を経済産業省が示しているカーボンニュートラル実現時の産業構造のイメージを用いて解説します.Part 5ではエネルギ変換のうち,モビリティ分野の船舶および航空機に着眼します.

出典 経済産業省,カーボンニュートラルの産業イメージ

【参考文献】カーボンニュートラルの産業イメージ(経済産業省):CN_Panel_B_1224.1 (meti.go.jp)

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エネルギ変換:モビリティ:船舶-航空機

船舶でのグリーン成長戦略では,カーボンフリーな代替燃料への転換とLNG船の高効率化が記述されています.前者では,近距離・小型船舶向けに水素燃料電池やバッテリー推進システム,遠距離大型船舶向けに水素およびアンモニア燃料ICEが記述されています.一方,後者では,気体燃料のエネルギ密度の低さを補うスペース効率の高い燃料供給システムとカーボンニュートラルメタンの利用が記述されています.

車両と同様に,パワーソースへの負荷の高さと,連続運転時間または距離の長さに応じて,純電動(BE:Battery Electric),燃料電池(FC:Fuel Cell),内燃機関(ICE:Internal Combustion Engine)など,エネルギ変換の様式は多様化の見込みです.なお,船舶でもICEの燃料は,水素,メタン,BDFなどが様々検討されており,とりわけアンモニアが注目されています.この理由は,アンモニアは,肥料用途で大量生産されており比較的に輸送技術や流通インフラが整っているためで,安全性ガイドラインも整備されています.

【参考文献】2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略(内閣官房):siryou1.pdf (cas.go.jp)

【参考文献】アンモニア燃料(資源エネルギー庁):アンモニアが“燃料”になる?!(前編)~身近だけど実は知らないアンモニアの利用先|スペシャルコンテンツ|資源エネルギー庁 (meti.go.jp)

なお,国際海運では,国際海事機関(IMO)が2018年4月にGHG削減戦略を発表しており,我が国では同年に国際海運GHGゼロエミッションプロジェクトが設立され,国際海運のゼロエミッションに向けたロードマップが公表されています.このなかで言及されている2050年目標は,IMO目標に準拠したGHG排出量50%削減(2008年比)であり,およそ半分(800TWh)程度のエネルギは,化石燃料に依存するとされています.

【参考文献】国際海運のゼロエミッションに向けたロードマップ(国土交通省):MT3 (mlit.go.jp)

航空機でのグリーン成長戦略でも,これまでのモビリティと同様に,連続運転時間または距離の長さに応じて,純電動(BE:Battery Electric),燃料電池(FC:Fuel Cell),内燃機関(ICE:Internal Combustion Engine)など,エネルギ変換の様式は多様化の見込みです.なお,ここでもICEの燃料は,水素,バイオ燃料などが様々検討されています.

なお,国際民間航空機関(ICAO)の第37回総会(2010年)で,GHGに関する世界的な推進目標の設定が決議され,2020年以降のGHG排出量は増加させないと決めています.ただ,第39回総会(2016年)では,上記目標の達成は困難とし,排出取引などの市場メカニズムに期待したGHG削減制度であるGMBM(Global Market-Based Measures)を2020年以降に導入すると決議しています.

【参考文献】河口雄司,ICAOが主導する温室効果ガス削減施策の概要と航空会社への影響について,運輸と経済,Vol.79,No.3 (2019),pp.120-128.:UK1903_00-海外交通事情.indd (itej.or.jp)

Part 6に続く

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