カーボンニュートラル社会の解説:Part 1,Part 2,Part 3の続きです.想定されている2050年頃の社会を経済産業省が示しているカーボンニュートラル実現時の産業構造のイメージを用いて解説します.Part 4ではエネルギ変換のうち,モビリティ分野のオフロード車両に着眼します.
【参考文献】カーボンニュートラルの産業イメージ(経済産業省):CN_Panel_B_1224.1 (meti.go.jp)
エネルギ変換:モビリティ:オフロード車両
オフロード車両では,BEV(Battery Electric Vehicle),FCV(Fuel Cell Vehicle),内燃機関車両(ICEV:Internal Combustion Engine Vehicle)など,車両の種類により様々なパワーソースが想定されています.オフロード車両は,移動に加えて何らかの作業を機能とする車両であり,多くはHDV(Heavy Duty Vehicle)に該当し,パワーソースへの負荷がオンロード車両と比較して高い傾向にあります.したがって,オフロード車両の多くは,比較的に高エネルギを貯蔵できるFCV,あるいはICEVが主流になると考えられています.ここで,ICEVの燃料は,水素,メタン,BDF(Bio-Diesel Fuel)をはじめとするカーボンフリー,あるいはカーボンニュートラル燃料が想定されており,パワーソースにはそれら燃料への対応技術が求められています.
【参考文献】小野寺康之,建設機械・鉱山機械用動力源の将来像~内燃機関に明日は来る~,自動車技術会シンポジウム No.01-20(将来パワートレインの戦略)講演資料 (2021).
【参考文献】種田敏行,オフロードパワートレインの将来展望,自動車技術会シンポジウム No.01-20(将来パワートレインの戦略)講演資料 (2021).
カーボンフリーおよびカーボンニュートラル燃料を使用するオフロードICEVは,使用される郊外や農耕地への供給を考えれば,オンロードICEVよりも実現の課題が山積しています.例えば,水素燃料のケースでは,港湾や主要幹線道路沿線などへの水素ステーションの設置計画はあるものの,郊外および農耕地域への設置計画は未知数です.BDFのケースでは,供給手段以前に流通量の課題が指摘されていますが,バイオエタノールの導入目標(50万kL/年)がエネルギー供給構造高度化法の告示で示されている一方で,BDFについては未知数です.ただ,世界的に見れば,BDFの生産量は増加の傾向にあり,カーボンニュートラル社会の実現手段として期待されています.
【参考文献】バイオ燃料の導入に係わる高度化法告示の検討状況について(資源エネルギー庁):023_05_00.pdf (meti.go.jp)
【参考文献】バイオ燃料の現状と将来(国際環境経済研究所):バイオ燃料の現状と将来(1) – NPO法人 国際環境経済研究所|International Environment and Economy Institute (ieei.or.jp)
また,オフロード車両は,建設用車両,農業用車両,荷役車両など多様で,オンロード車両と比較して使われ方,使われる場所などに共通項が少ないうえ,販売台数も少ないので,規模の経済効果が作用しにくく,脱炭素技術の経済合理性は成立の難易度が高いと考えられます.さらに,オフロード車両が,乗用車をはじめとするオンロード車両と異なるパワーソースを採用し,異なる燃料を使用することになれば,なおさらです.
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