カーボンニュートラル社会の解説:Part 1,Part 2の続きです.想定されている2050年頃の社会を経済産業省が示しているカーボンニュートラル実現時の産業構造のイメージを用いて解説します.Part 3ではエネルギ変換のうち,モビリティ分野のオンロード車両に着眼します.
【参考文献】カーボンニュートラルの産業イメージ(経済産業省):CN_Panel_B_1224.1 (meti.go.jp)
エネルギ変換:モビリティ:オンロード車両
モビリティは,乗用車両をはじめとするオンロード車両,建設用および農業用車両をはじめとするオフロード車両,船舶,航空機に分けられ,親和するエネルギの形態は様々です.
オンロード車両では,主に電動パワートレインが想定されており,バッテリ,とりわけリチウムイオンバッテリに貯蔵した電力を電気モーターに供給し,軸動力へとエネルギ変換するBEV(Battery Electric Vehicle)がシンプルなシステムとして知られています.人の移動を主な利用目的とする乗用車両では,パワーソースにかかる負荷が他のモビリティと比較的して低く(LDV:Light Duty Vehicle),BEVは現在でも概ね実用レベルに達しています.主な課題には,(1)製造過程でのCO2排出量低減,(2)充電時間短縮,(3)無充電での走行距離延長が挙げられています.
荷物の運搬を主な利用目的とするトラックなどの運搬用車両は,走行距離が長いうえ,パワーソースにかかる負荷が乗用車両と比較して高く(HDV:Heavy Duty Vehicle),バッテリのエネルギ密度の不十分さからBEV化は実用困難と考えられています.運搬用車両に限らずHDVでは,様々なパワーソースが検討されていますが,カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略では,水素燃料による燃料電池車両(FCV)が期待されています.主な課題は,水素インフラの拡充で,再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議での2017年12月26日付けの水素基本戦略では,水素ステーションを2017年時点での100ヶ所から2030年までに900ヶ所にする目標が示されています.しかしながら,2019年度末での給油所数29,637箇所を鑑みれば,2030年末時点でも水素ステーションにアクセスできる運転者は限定的かもしれません.
【参考文献】2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略(内閣官房):siryou1.pdf (cas.go.jp)
【参考文献】水素基本戦略(再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議):20171226002-1.pdf (meti.go.jp)
【参考文献】揮発油販売業者数及び給油所数の推移 登録ベース(資源エネルギー庁):2020_0730_01.pdf (meti.go.jp)
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