カーボンマネジメント

動向

 エネルギ起源のCO2排出量[t-CO2]は,①エネルギ消費量[J]と②消費エネルギの炭素強度[t-CO2/J]の積からなります.したがって,カーボンニュートラル社会の実現を目指して各方面で①では省エネ,②では電化および燃料転換が進められています.また,これらに加え,社会活動や生産活動の過程で生じたCO2を回収し何らかの手段で固定化する動きもあります.この発生したCO2への対処はCCUS:Carbon Capture, Utilization and Storageと称されていますが,従前には単に排出されていたCO2をわざわざ機器で回収して輸送および処理するには様々な投資が必要で,合理的なCO2バリューチェーンが成立し得るか不透明です.

 少し深堀して考えてみると,ゼロコストで排出していた従前比で,(1)CCS:Carbon Capture and Storage装置,(2)CO2輸送,(3)必要ならば資源化処理,(4)CO2サプライチェーンに係わるインフラ設備,(5)上記(1)~(4)に投じるエネルギ,少なくともこれらへの投資,すなわちコストが必要で,これらのコストをだれがどのプロセスで負担するのか明らかになっていません.また上記(2)および(4)のCO2インフラでは,CO2を廃棄物として扱えば,現社会でのごみの回収/処理に類するようなシステムが必要かもしれませんし,有価物として扱うのであればごみのリサイクルに類するようなシステムが必要かもしれませんが,政府が2023年6月に公表したカーボンリサイクルロードマップを見ても課題設定されるのみで,アクションプランは未だありません.

 しかしながら,上記のカーボンニュートラルへの打ち手①②だけでは対応できない業種/事業者ではCCUSは重要と考えられており,コンビナートなどの産業集積地,すなわち大規模一括型のCO2排出源をトップランナーに事業間連携などが進められています.いわゆるやり易い所から着手されている状況ですが,比較的小規模なCO2排出源が広く分散されている地域でも投資効率が悪くなるものの動きがあるようです.CO2の流通規模を拡大し上記コストを下げるため,やり難い所である小規模分散型のCO2排出源でのチャレンジが求められていて,上記のカーボンリサイクルロードマップでは,回収されたCO2の供給者と利用者のマッチング等を担う,CO2マネジメント事業者(仮称)の役割/課題,担い手などの検討を進める旨が記述されています.おそらく電力を中心とするエネルギマネジメント:EMS分野でのアグリゲータに類する事業者と同様の機能が期待されていると推察しますが,上記のゼロコスト社会からの転換はマーケットの黎明期であり,行政のリーダーシップに基づく制度設計に期待します.

 なお,下記参考資料などでもCCUSをカーボンリサイクルと称されていましたが,行政をはじめとして最近はカーボンマネジメントと称するようになっていくようです.個社内での炭素会計:カーボンアカウンティングに基づくカーボンマネジメントと混同が生まれそうですが.

【参考文献】カーボンリサイクルの社会実装に向けた日本の取組【直近1年間の進捗】https://www.nedo.go.jp/carbon-recycling/2023/230927.pdf

【参考文献】カーボンリサイクルについて(経済産業省省エネルギー庁):https://www.enecho.meti.go.jp/category/others/carbon_recycling/

【参考文献】カーボンリサイクルロードマップ(経済産業省,2023):https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/carbon_recycle_rm/pdf/20230623_01.pdf

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