2020年10月26日,菅首相は2050年までに温室効果ガス(GHG : Greenhouse Gas)の排出を実質ゼロ(ネットゼロ)化すると表明(カーボンニュートラル宣言)しました.気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)での京都議定書や同第21回締約国会議(COP21)でのパリ協定など,我が国は既にGHG削減を国際社会に表明していますが,カーボンニュートラル宣言を機に,グリーン成長戦略などをはじめとする地球温暖化対策が加速しています.本ページでは,このカーボンニュートラル宣言の概要を説明します.
【参考文献】カーボンニュートラル宣言(環境省):環境省_2050年カーボンニュートラルの実現に向けて (env.go.jp)
【参考文献】京都議定書(WWF):京都議定書とは?合意内容とその後について |WWFジャパン
【参考文献】パリ協定(WWF):パリ協定とは?脱炭素社会へ向けた世界の取り組み |WWFジャパン
【参考文献】グリーン成長戦略(経済産業省):2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略を策定しました (METI/経済産業省)
カーボンニュートラル宣言を支えるグリーン成長戦略の説明資料では,温暖化への対応を経済成長の制約やコストとする時代は終わり,国際的にも成長の機会と捉える時代に突入,経済と環境の好循環を作っていく産業政策がグリーン成長戦略と定義されています.したがって,グリーン成長戦略は,ESG投資,TCFD,RE100をはじめとしたある意味で同調圧力的な性質をもつ取り組みへの,HowやDoを明示する構成になっています.また,HowやDo,すなわちイノベーションの振興のため,グリーンイノベーション基金と銘打たれた予算が用意されています.
【参考文献】成長戦略会議(第6回)配布資料1 2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略(内閣官房):siryou1.pdf (cas.go.jp)
グリーンイノベーション基金は,10年間で2兆円の予算とされています.国立研究開発法人新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)が本基金への窓口に設定されており,2021年4月から各プロジェクトへの公募が開始されるようです.ここで,本基金では,プロジェクトを採択される企業が経営者のコミットメントのもと,長期的な事業戦略ビジョンを提出する義務と経営課題として取り組むことを負う点が特徴です.世界での同様の取り組みには,ARPA-E(米国),Horizon 2020(EU),Innovation Fund(EU)などが公表されており,世界でのビジネスを展開している企業は,国際競争力を失わぬようグリーンイノベーション基金の機会損失を避ける必要があるかもしれません.
【参考文献】グリーンイノベーション基金(経済産業省):greenlpg_presen_METI_20210226.pdf (j-lpgas.gr.jp)
このような機運のなか,私たちは何らかの係わりとともに2050年のカーボンニュートラル社会に向かっていくことになりますが,利害関係者には正しい戦略,行動が必要です.また,利害関係のない国民には,経済的不利益や機会損失を避け,幸福な暮らしを得る必要があります.これらには,まず,想定される2050年の社会の姿と,その手段を知ることが大切と考え,経済産業省が示しているカーボンニュートラルの産業イメージを次の構成で解説します.
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